若さへの執着と嫉妬とそれを知られたくないこと
ズーニーさんの最後の授業が終わった。
悔しさでいっぱいだった。出し切れなかったし、エンターテイナーとして、今日発表していたコルクの同期全員に負けた。
そう思った。
………
今日の授業は月に1回あるズーニーさんの5時間の授業。
今日のワークは「人生で負けたと感じたことを1時間で小説にすること」
…負けた、ということは嫉妬や悔しさを書くということやんな?
嫌やなぁ、尿漏れパット使ってることも赤ちゃん返りすることも、バレても恥ずかしくない。
でもウチが何に嫉妬を感じているのかバレるのだけは恥ずかしい。
授業の説明を聞きながらそう思っていた。
32歳のとき、元パート先の同僚(18)
にひどく嫉妬したことを覚えている。
職場に女性が少なかったため、彼女が来るまでは、私はホントにチヤホヤされていたし、私も愛想を振りまいた。
すでに結婚はしていたが、チヤホヤされる快感は止められなかった。
自己肯定感の低いわたしは、異性にチヤホヤされることで、自分の価値を計っていた。
それが、ある日新しく入ってきた18歳の女の子に、アイドルの座をとられたのだ。
一瞬だった。
男性たちの目線はその子を追い、ことあるごとに理由をつくり彼女に喋りかけにいった。
彼女は、美しい。
みずみずしいその肌は向こう側が見えるんじゃないかと思うほど透明で、白かった。
私がかつて持っていたもの、今はもっていないもの。
若さ。
私は頭痛がするくらい悩んだ。焦ってとても高価な化粧水(ドモホルンリンクル)を買った。
しかしドモホルをいくら叩き込んだところで、肌のハリは戻ってこなかった。
むしろ皆から「ドモホル」というあだ名を付けられて更に歳とった気分になった。
しかしドモホルは、若い子に嫉妬してるなんて死んでもバレたくない。
その18歳の子に、優しくした。
優しくしてるうちに彼女は私に懐いてくれた。
嫉妬しながらも、コロコロと周りをうろつく彼女を、娘みたいで可愛いなぁと思うようになった。
負けた、負けた。
私は部長のデスクの後ろ側の壁についている鏡をみた。
若い頃にはなかった、口の横に影ができていた。(たるみのせいか)
18の子に、「明日誕生日ねん。33ねん」
と言ったら
彼女は
「ババぁですね。」
と一言。
殺したろかと思ったけど、なんだか面白くなって吹き出した。
わたしの発表は、ここまでだった。いや、もっと嫉妬の部分をサラッとかいてしまった。
時間は1時間あったのに、55分は「このことを書きたくないから他のことを書こう。でも何を」
と悩んで過ぎていってしまった。
あと5分。あぁもう時間がない。
覚悟を決めよう。
描くなら、エンターテインメントとして。聞いてる人の心を動かすものを描く。
でもアカン。時間が足りない(言い訳乙)
他の同期の発表が次々されていく。おもしろい。心がうごく。
わたしは敗北感でいっぱいになった。
むしろ今日の体験こそ、負けた、負けた、だった。
【反省】
中途半端にカッコつけようとするから表現も中途半端になり、誰の心も動かせない。